こんにちは!ネットビジネスカフェのぎーさんです(^^*)
2021年アニメ化して話題の『86(エイティシックス)』という作品をご存知でしょうか?
原作は、2017年に電撃大賞を受賞した安里アサトさん著『86(エイティシックス)』。
現在は、累計130万部を超えるヒット作となっています。
私はこれまで、ファンタジーとは漫画とアニメで観るもので、文庫を読むのは苦手だったのですが
いまや、最新10巻まで読破してしまいました。笑
今回は、そんな電撃文庫が贈るSF作品『86(エイティシックス)』の魅力をご紹介!
時間が取れる方はビジネスの息抜きにどうぞ。
「ブタに人権を与えないことは、非道ではない」ならば‥
本作は、レギオンという完全自律型兵器を開発したギアーデ帝国から宣戦布告を受けたサンマグノリア共和国が、戦争終結までの間、白銀種と呼ばれる髪も瞳も銀色の血統種だけを守るために、それ以外の有色人種を「86(エイティシックス)」と呼称し、「進化に失敗した人型のブタ」と罵り、前線で戦わせているところから始まります。
アニメ「86」1話より引用
「ブタに人権を与えないことを、非道とされた国はない。」
と公に宣い、「86(エイティシックス)」と呼称された有色人種だけが市民権を剥奪され、ブタ扱いされ、老若男女問わず戦闘機に載せられレギオンと戦わせられ続けています。
しかし、彼らは人間ではないという理由から、白銀種からはプロセッサー(中央処理装置)と呼ばれ、その戦闘機は無人機と呼ばれ、戦死者は出ているにもかかわらず、白銀種向け戦況放送は毎日
「本日もサンマグノリア共和国の戦死者は、ゼロ名であります!」
という、明るく不気味な報道が当たり前のように流れる、白銀種だけが平和に暮らす街。
…お気付きかと思いますが
本ストーリーの題材は
機械戦争であり、
7巻まで読み進めた結果ボーイミーツガールもありますが、
ずっと底に走っているのは、戦時下の「人種差別」です。
設定は国名も含めてすべて完全ファンタジーですが、かの「人種差別政策」の史実を題材にされており、人物の心情を、設定を、原作者の憶測だけで描いているわけではないことも、現実的なこのストーリーの魅力といえます。
そのため、ざっとレビューを見たところ、日本人以上に海外の方にウケてる作品な印象もあります。
1巻から登場人物の少年少女たちが、あまりにもあっけなく戦死していく。世界の殺伐とした場面が多いです。
ファンタジーでまでこんな残酷な世界を見たくない・・・という人には、この設定を知った時点でキツイ可能性があります。
が、ダークファンタジーが好みという人にとっては、恐ろしいと思いながらも、登場人物たちの行く末を見届けたくなってしまいます。
迫害する側の偽善
アニメ「86」1話より引用
ヒロインの軍人少佐ブラディレーナ・ミリーゼは、齢16歳で少佐昇進を果たしたエリート白銀種。
でありながら、幼い頃に86(エイティシックス)の兵士に命を助けられた経験から、この人種差別を前提にしたレギオンとの戦い方に疑問を呈し続けます。
しかし、「こんなことは本来、許されることではありません!」と上官に、友人に言いながら、
「私は(他の人とは違う)ちゃんと人扱いしてます」と言いながら、
無意識に、彼らを人間扱いしていない自分の態度に、しばらく自覚することができません。
作戦中、86にとうとうブチ切れられるまで。
そこでやっと自分自身の「私だけは差別とかしません」みたいな態度が「偽善者と呼ばれる理由」と気がつきます。
この辺りの描写は、教訓としてうまく描かれています。
ちなみに 私も初回観た時は、このヒロインがあまりにも未熟で、「君、少佐だろ…?しっかりしろよ…」と思ったものです。しかし、背景としてはこの国と軍そのものが滅びかけというか、腐った組織になっていたことを踏まえると、勝手に理想としていた軍隊とは、かけ離れた組織だったのかもしれないと思ったのでした。
「そうならざるを得なかった」生き方
アニメ「86」1話より引用
共和国によって、まだ6.7歳くらいの幼少から、自分の家族も人間らしい生活も全てを奪われ、戦場で散っていくことが当たり前の生き方になっていた86(エイティシックス)の少年少女たちは、死と隣り合わせに生きることが普通に育ちます。
主人公のシンエイ・ノウゼンをはじめ、86たちはその最前線で、共に戦う仲間以外には、世界の何に対しても期待をせず、ただ己が終わるその時まで、戦い抜くことだけをお互いに決め、それを誇りに、死ぬまで進んで戦います。
しかし、書きすぎるとネタバレになりますが、彼らは退路も往路も「絶死」するように共和国から仕組まれた環境に追い込まれているから、「戦いぬくを誇りとしている」というのであって、正直、それは自分たちが選んだ生き方と言っているもののそうではないし、戦いたくてそこで戦うようになった訳でもない。
というのが現実です。
この「そうならざるを得なかった」生き方模様を観ていると、戦争というのは現代日本にはあまりにも身近ではないものではありますが、
そうやって、自分に何かを言い聞かせていないと、自分らしさは保てない人間らしい弱さの表現が、おそらく戦争のない世界に生きている多くの方にもきちんと刺さっている描写なのではないかと思います。
完全自律型兵器の謎
アニメ「86」1話より引用
冒頭から人間の非道が描かれすぎるので、
一時的に
ともなるのですが
この物語は、完全自立型兵器 VS 人間の戦争。
兵器によって人間の醜悪さが露呈している
だけなので、やはりラスボスは完全自立型兵器、です。
このレギオンという兵器は、中枢処理装置に、人間の脳を使います。
…この設定もなかなかダークなのですが、戦争の長期化による物資不足から、戦死者の脳を再利用するという悪趣味極まりない所業で知能を得ることができると学習したレギオンたちが、戦死した人間から脳を奪い、人間と同等レベルまで知能を向上させます。
この戦死者とは86が多いので、結局は迫害した者が形を変えてその報復を受けている、という泥沼構図になってます。
そこんとこの話が濃いので目立ちませんが、この兵器は一昔前からよく流行った、「AIの暴走」を描いています。
そのためバトルシーンも多いのですが、バトルシーンは原作よりアニメの方がかなり良くできてますので、先にアニメ見てから原作読むのがおすすめ。
とくに活字に慣れてない人は、文庫のバトルシーンはかなり漢字が多いので、想像しながら読み進めるのが、はじめは慣れません。
アニメを見たあとだと、文庫でバトルシーンを想像するのがラクになります。
この世界観にある少年少女にも注目
電撃文庫「86」1巻より引用
こんな、どシリアスな世界観にあって、さらに恐らく原作者様は戦争史やメカについてもかなり勉強されておられるからか、戦闘シーンは、活字で読んでると…なかなか難解です。笑
なので戦闘シーンは、結構雰囲気読み。。
それでもこの物語をまだ重苦しく読まずにいられるのは、登場人物たちがまだ少年少女たちで、絵面はかわいく、人間どうしのやりとりも丁寧に描いているのと、主人公とヒロインが無意識のうちに、だんだん心の距離を縮めていく(恋愛に発展しそう⁈)ところにも注目できるからまだ観れるのです。
ここの描き方も、単純なボーイミーツ感だけをアピールせず、良い具合に描かれていて面白いです。
ダークファンタジーだが「それでも」
「差別とは人間の本性であり、それでも人には優しい部分もある」という、残酷かつ現実味のある展開を描く86。
単に機械との戦争が終われば、人類が救われる
とは簡単にいかないことをしっかり描くところが
ダークファンタジーとしか言えないと思います。
実のところ、このストーリーはどうなったら登場人物たちが救われるのか
最新巻まで読んでいてもまだ分かりません。
戦争が終わったあとの世界を全くイメージできなくて、苦悩する人たち。
戦争が終わっても、きっと人種差別はなくならない。
戦争が終わっても、戦死した人たちは還らない。
そういう悲壮さも、あたり一面散りばめられています。。
でも、本作には
「それでも」
という言葉がよく使われていて
そんな世界で、人間は綺麗ではないけど、それでもだから自分の望みを何も持たないのは嫌だと、なにかを見出すために一生懸命なキャラクターたちを見てると、行く末がついつい気になりますし、いま世の中に望みが見出せない人へも、ある意味希望のメッセージになる気はします。
この物語の仕事に通じるおもしろい点
戦闘シーンはかなり難解ですが、人の「存在意義」に関する描写がきめ細やかで良いです。
戦い抜くことを自分たちの矜持(プライド)として生きることの
誇り高さと
人として欠落した側面
を描くことで、誇りだけを頼りに生きることが、いかに危うい生き方なのかを示しているのは、結構、現代には良いくすりなのではないかなと。思いました。
現代は、先人のおかげで日本ではリアルな戦争など起こることもなく、平和ではあります。
しかし、資本主義社会では、経済的にはやはり日々戦っていると思います。
生きるためには働かなければならない。
でも、私たちは働く為に生きているのではありません。
仕事に存在意義を求める人は多いですが、仕事に・ビジネスにのめり込みすぎて、のまれている人も多いと思います。
だから、知らず知らずに何かに囚われている人には、虚をつかれる発見が多いはずです。
…壮大に広がった本ストーリーの風呂敷を、今後どのように原作者様がうまくたたんで決着をつけるのか、注目しています。
本作は今でも連載中で現在10巻が最新巻。
現実の国と地域は出てこないので、読んでいるとすぐにファンタジーの世界に完全に入り込めますが、題材と展開がどシリアスなため、面白いながら、こちらの気が引き締まる『86』。
世界は美しく、人間社会は残酷。
だけど優しい部分もあり、救いは示される。
内容です。1巻だけで完結できる仕様にもなっており、そんなに長いの読めねえって人は、1冊だけにしとくと良いと思います。
ダークファンタジーがお好きな方の息抜きに、おすすめします。